お題「#おうち時間」
緊急事態宣言が5月いっぱいまでに伸びてしまいましたね。
皆様、ゴールデンウィークはどのような「おうち時間」をお過ごしになりましたか?
実は熱気球関係者は、中止となってしまった佐久バルーンフェスティバルをおうちでも楽しみたい!ということで「#エア佐久」と題してエアでの大会を楽しんでおりました。
大会と同じスケジュールで、午前午後にブリーフィングを実施し、気象チームが本番バリに天気を分析してくれて、それを元に競技委員長によるタスク設定が発表され、オブザーバーが計測…最後にはものすごいリザルトが発表されたり。本番さながらの大会運営に気球人の気球愛をひしひしと感じました!
さて、今回は「#エア佐久」のzoom打ち上げでも話題となった、スロベニアでの世界選手権について、2018年からの反省と2020年に向けてどんな準備をしているのか、お伝えしたいと思います。
前回の記事では、世界選手権のスケジュールや選手選考、費用について解説していますので、まだ読んでいない方は是非ご覧ください。
2018年の反省
2018年にオーストラリアで開催された前回の世界選手権。日本から7名の代表選手が出場しましたが、結果は海外勢から突き放される形となり、「このままでは日本は世界に置いて行かれる」と代表選手及びこの大会に参加したスタッフは危機感を感じました。
日本代表チームとして
2014年には雄大が優勝し、2016年には佐藤選手が8位入賞と、この頃までは日本代表選手は世界と戦えていたはず。しかし、2018年に惨敗となった要因は何なのでしょうか?
考えられるのはざっとこんな感じ。
- ロガータスクの発展に対応できていない
- フライトプランの柔軟性が必要だったこと
- 代表チームとして未熟で、連携がうまくできていなかったこと
ロガータスクの発展
日本で開催されている大会は基本的にフィジカルタスクで、地上に設けられたターゲットまたはエリアを目指し、オブザーバーという競技本部から派遣されたスタッフが結果を計測します。
一方、2010年頃からヨーロッパではロガータスクという、GPSの航跡を使った競技が行われるようになりました。ゴールの宣言やマーカーの投下はロガーで行う為、ゴールは空中に設定することができたり、空に描かれたエリアの中を飛ぶというようなタスクを設定することができたりと、競技の幅やゲーム性が広がりました。
ゴールを宣言してそこに向かうという点について、日本人は世界に負けていないはずですが、このロガータスクが数年のうちに発展してきて、よりトリッキーな内容が実施されるようになり、日本はガラパゴスと化してしまっていたのです。
フライトプランの柔軟性
2018年の競技委員長はルクセンブルグ出身のClaude Weberで、タスク設定が面白いことで有名です。
日本の大会では大体 in orderと言って、タスクを決められた順番でこなしていくことが多いので、パイロットはどのように風を使ってターゲットに向かうかを考える事がメインになります。
しかし、2018年のClaudeのタスク設定は any order で、ターゲットへのアプローチの他にどのような順番でタスクをこなすかも考えなければなりませんでした。地上のターゲットを目指すタスクや、なるべく長い距離を飛びたいタスクなど様々なタスクがコールされている状況で、どんな順番で飛ぶのがベストか、ブリーフィングから離陸までの短い時間で考えなければならないのです。
any order での競技に慣れていない日本人には、こういった柔軟性が求められるタスク設定も難しかった。
ただ、実際に成績上位の選手にどの順番でタスクをこなしたか聞いてみても、順番はバラバラだったので、どれが正解だということはない。「コレだ!」と自信を持って飛ぶことが重要なのだと感じました。
日本チームの連携
ここ数年チームとしての強さを出しているスイスは、経験豊富なパイロットがマネージャーとなり、パイロットやクルーをリードしています。また、フライト前には大会からのパイバルデータの他に、自前のパイバルデータや気象チームからの情報を活用しながらフライトプランを念入りに打ち合わせしています。フライト後にはまたチーム全員で集合して反省会を行っていました。
出場パイロット単位のチームではなく、国としてしっかりと構成されたワンチームなのです。このようにして、約3機で国としてチームを作って挑むようになったスイスは、2016年には3位・5位に入賞、2018年には2位・4位に入賞と、安定した強さを見せています。
日本代表チームも、チームとして飛ぼうという動きはあるのですが、現在の選考方法では日本代表順位が確定するのが世界選手権開催の10カ月程前、エントリーが確定するのが6カ月程前というスケジュールで、毎大会選手の顔ぶれも変わる為、どのようにチームとして動くか?という話をするのが精いっぱい。また、実際に代表選手が揃ってトレーニングフライトをすることは難しいので、世界選手権のトレーニングフライトで少しやってみて、ぶっつけ本番の状態。
代表選手を固定し、大会を重ねるごとに強さを増すスイスチームに、これで勝てるはずもありません…
2020年への準備
個人選手としては以下のようなことも反省点として挙がりました。
- 大会前数カ月、フライトをできていなかった
- フライト中に必要なパイバル情報がきちんと準備できていなかった
これらの反省を2020年の世界選手権では解決する為、PUKAPUKAでは7月からヨーロッパ遠征を計画し、日本代表選手でラジオゾンデを購入することで日本チームとしてより精度の高いパイバル情報を活用できるようにしています。
7月からのヨーロッパ遠征
9月にスロベニアで開催される世界選手権の前に、Claude Waberが競技委員長を務めるルクセンブルグの大会をはじめとした大会に参加して、トレーニングをする予定でした。
- スペイン:European Balloon Festival
- ルクセンブルク:Luxembourg Balloon Trophy
- イタリア:Italian International Balloon Grand Prix
- ポーランド:Lezsno Balloon Cup
しかしながら、本命のルクセンブルクの大会が新型コロナウイルスの影響でキャンセルが決定…!スペインとイタリアもヨーロッパでは特に感染者が多くロックダウンされている状況の為、遠征は中止することにしました…。
イタリアの宿に「こんな状況だから今年は諦めて、またの機会に行きたい」とキャンセルの連絡をすると、「5月上旬にはロックダウンが解除されて普段通りの生活に戻るから大会はやる予定だから、残念。」との返信が来て、イタリアやる気なのか…?!と驚きが隠せません。
ラジオゾンデの導入
スイスをはじめとしたヨーロッパ諸国がすでに導入して使用しているラジオゾンデ。これは、上空の気温・湿度・風向・風速等の気象要素を観測する気象観測器です。
これまで使用してきたパイバル計測機は、望遠鏡のようなもので覗きながらパイバルの動きを追い、その動きから風向きや速さを算出していましたが、オペレーターは30分程度はその場でパイバルを追い続けなければなりませんし、もし見失ってしまえばそこで計測はストップとなります。また、雲低が低くて雲に隠れて見えなくなってしまっても、計測はそこまでになってしまいます。
それに対し、ゾンデは風船にGPSをつけて飛ばし、GPSが定期的にデータを送信してきてくれる仕組みなのでいいことづくめなのです。
- 飛ばしてしまえばデータを待つのみ!(データの処理は必要)
- 雲があっても位置情報から風向風速を導き出しているので問題なし!
- 風向風速の他に温度の情報も取れるので、気象の分析にも役立つ!
飛ばしたGPSはどうなるのかと言うと、設定した高度または任意のタイミングで切り離す信号を送る事で風船から切り離し、落下してくる仕組みとなっています。落下時には、それまでに計測したデータから大体どのあたりに落ちるよ~という事も教えてくれるので、回収時にはその辺りを捜索。落下したGPSはビープ音を鳴らしながら回収されるのを待っているので、近くに探しに行ったら音を頼りに見つけてあげればOK。
なんか、見つけてもらうのを待っているなんて、GPSがすごく愛おしいですよね
いざ、購入!
これらのメリットから、2020年の日本代表選手4名はラジオゾンデwindsondの購入を決定しました。お値段は約30万円。
スウェーデンから届いたwindsondの現物はTeam Kailasのしのさんが受け取り、試験や設定をしてくださっている所で、どのようにオペレーションしたり、フライトに活用するのかは代表選手で検討中です。
さいごに
7月からスペインに飛び、9月の世界選手権後はスイスから日本に戻る予定だったのですが、遠征を中止にしたことで往復の航空チケットをキャンセルしなくては…コロナの影響とは言え、7月はまだまだ先のことなので、フライトの変更や払い戻しの対象期間に入っておらず、水の泡になりませんように!と祈るばかり…
9月に世界選手権が開催される場合は、新たにチケットを購入しなければなりませんが、現状ではどちらとも分からない…なんとも予定は未定な状況ですが、開催に向けて今後も準備を進めて行きたいと思います!
最後までお読み頂き、ありがとうございました!