ぷかログ

熱気球パイロットとして世界を旅する空飛ぶフリーランスのイマ

【スロベニア】2020年熱気球世界選手権は開催されるのか?

今週のお題「激レア体験」

2020年9月にスロベニアで開催される予定の熱気球世界選手権
新型コロナウイルスの状況によって、開催されるのかされないのか…大変気になるところであります。

2年に1度開催される世界選手権は熱気球競技の最高峰の戦い。アプローチ合戦や雰囲気は、その他の大会とは比較にならないくらいの大迫力!鳥肌モノとにかくスゴイんです。

ここで2018年の動画をご紹介。地上に設置されたゴールに向かってアプローチしている様子です。ゴーゴーというバーナーや、気球同士が接近して鳴らされるホイッスルの音から、緊張感と迫力を感じて頂けるのではないでしょうか。

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こんなにスゴイのに、熱気球に競技があるということも、世界選手権があるということも、なかなか知られていない…。
ましてや、世界選手権に向けた準備や、どのようにして当日を迎えるのかという事は、代表選手やそのクルーなど、ごく一部の人にしか知られていません

もっと世界選手権に向けて皆さんと一緒に盛り上がっていきたいので、世界選手権に向けて準備する私たちの現状をシリーズでお伝えしたいと思います。

PUKAPUKA SUPPORT-Tシャツを買ってくださった皆様、熱気球好きの皆様、応援してくださる皆様…一緒に世界選手権の開催を楽しみにお待ち頂けると嬉しいです!

世界選手権の開催概要

スケジュール

世界選手権のスケジュールはこちらのとおり。
競技は5日間、午前午後の2フライトで計10フライトが予定されています。

2020.9.14-19 レーニングフライト
2020.9.20 オープニングセレモニー
2020.9.21-25 競技
2020.9.26 クロージングセレモニー

開催地

会場はスロベニアのMurska Sobota(ムルスカソボタ)という、人口2万人の小さな市。

航空写真を見て頂ければ一目瞭然ですが、周りは一面が畑になっており、地形もフラットで、プレ大会に出場した選手からは「飛びやすい!」と評判の良い場所です。

大会中の宿泊施設を探してみると、10分ほど離れた場所には大きなプールやジャグジーがついたホテルが立ち並んでおり、キャンプ場やコテージも沢山ありました。スパで有名な街なんだそうです。(大会じゃなかったらプールに遊びに行きたい…我慢ガマン…)

参加選手の数

大会には世界各国から105機がエントリーします。

過去大会の参加国は、2016年の佐賀では31カ国、2018年のオーストリアでは34カ国。2020年世界選手権には34カ国から選手が招待されています(4月現在)。

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エントリーフィー

世界選手権へのエントリーフィーは€600、日本円で約72,000円。このエントリーフィーには以下のものが含まれています。

  • 競技フライトに使用したガス代
  • フライトエリアの紙地図2枚
  • 気象やフライトに関する情報
  • パイロット+3名分の朝食
  • パイロット+3名分のオープニング・クロージングセレモニーチケット

クルーの数が増えたり、競技で使用するヘリウムの調達を大会側に依頼すると、それらの料金が追加請求されます。

世界選手権出場までの流れ

世界選手権にはどうやって出場するのでしょうか?

それは、出場選手は「国に与えられた出場枠数」「国の代表選考順位」によって決まります。例えば日本に3枠与えられれば、日本代表選考順位の3位までが出場できるということです。

世界選手権の国別出場枠数

先ほど、105機がエントリーすると書きましたが、この105の出場枠をどのように各国に割り振るのでしょうか?

まず5枠は、世界選手権1位~3位、女性世界選手権1位、ジュニア世界選手権1位という、前回の世界選手権でのメダルホルダーへの招待です。

残りの100枠は、Frist Roundとして参加国それぞれに2枠。First Roundのエントリー締め切り後に、Second Roundとして前回の世界選手権の成績順に該当国に枠が与えられていきます。

2020年の世界選手権には34カ国が参加することになっており、First Roundで各国に2枠ずつの招待が届きます。仮に全員がエントリーすれば68枠を消化。残り32枠は、1位イギリス、2位スイス、3位ロシア・・・と、2018年の成績が32位までの該当国に与えられます。(棄権などがあればその枠が次へとまわります)

3位以内に入ると、次回の世界選手権の枠を+2枠獲得でき、30位以内に入れば+1枠獲得が確実なので、上位の結果を残すことが次の世界選手権につながるのです。

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2018年世界選手権の日本代表の成績は、16位39位・68位・73位・83位だったので、2020年の日本の枠は3枠は確定。参加国や他国の棄権によっては、4枠いけるかどうか…?!というところです。

日本の代表選考

では、国に割り当てられた世界選手権出場枠を日本人選手の誰が掴み取れるのか?

日本の代表選考順位のつけ方は、国際選手権日本代表選考規定に以下のように記載されています。

  1. 日本選手権前年度1位、同前々年度1位、NRS*1前年度1位、NRS前々年度1位、日本選手権前年度2位、日本選手権前々年度2位の順に、日本選手権前年度と同前々年度、NRS前年度とNRS前々年度の1位より交互に序列をつけて代表選考順位を決定する
  2. 日本選手権はNRSに優先する
  3. 前年度は前々年度に優先する
  4. 前年度と前々年度に同一パイロットが存在する場合、代表選考順位の高い方のみを採用する。
  5. 日本代表選手の補欠はここで決定された代表選考順位により、上位から選出する。

つまり、NRSの順位と日本選手権の順位から代表選考順位が決定するということです。

具体的に、2020年の世界選手権の代表選考順位がどうなっているのか、見てみましょう!(敬称略)

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規定のとおりに結果を並べるとこのとおり。2019年の日本選手権は開催されなかった為、対象外ということで、代表選考順位は「藤田雄大➡須江哲洋➡飯盛一保➡上田諭➡佐藤将史」となっています。

あ、もちろん世界選手権に行くには「世界選手権に行きたいか~?」という日本気球連盟からの意思確認に対して、選手は「行きたいぞー!」っと意思表示をする必要があります。

世界選手権への招待の状況

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2020年2月にFirst Roundの招待が来て、4月1日にエントリー締め切りの結果、34カ国の参加が決定しました。その後、4月にSecond Roundの招待が開始し、6月1日にエントリー締め切りの予定です。

日本にはFrist Roundで2枠、Second Roundで2枠まわってきたので、藤田・須江・飯盛・上田の4選手がエントリーします。4枠きて良かったー!

新型コロナウイルスの感染拡大によって、大会の開催が不安な状況ではありますが、現在はエントリー受付が行われているので、準備が進められている模様です。

中止の判断は開催の2か月前までに発表されるとのこと。とにかく、待つしかないですね。

世界選手権への遠征費用

遠征費は、どれくらいかかると思いますか?

今回のスロベニア開催であれば、パイロットの遠征費は以下のようにざっと90万くらいはかかります。クルーが体ひとつで行くとすると30~40万くらいですね。

  • エントリーフィー:7万
  • 航空券:20万
  • 輸送費:30万
  • 宿代・食費:10万
  • レーニングフライトガス代:3万
  • レンタカー代:10万
  • ガソリン代:3万
  • 機体保険料:3万

2年に1度の大会とは言え、手配も費用負担もパイロットがすべて行わなければならず、特に金銭的な負担が大きいのが現状です。

さいごに

今回は、世界選手権にはどのような選考があって、誰が出場するのか、出場するにはどのれくらいの費用がかかるのかをご説明しました。

国の代表として出場する選手は、エントリー手続き、航空券や宿、輸送の手配、クルーとの調整もすべて行わなければならないので、金銭的にも労力的にも負担が大きいです。

その為、私たちは2019年夏にPUKAPUKAの世界選手権SUPPORT-Tシャツを製作し、多くのみなさまに応援して頂きました。本当にありがとうございます!
(まだまだ在庫あるので、応援よろしくお願いします!)

docs.google.com

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現段階では9月に世界選手権が行われる予定ですので、引き続き出場するつもりで準備をしなければなりません!

次の記事では「2020年の世界選手権に向けてどんな準備をしているのか」をお伝えしていきたいと思います。

 

最後までお読み頂き、ありがとうございました!

 

*1:NRSというのは熱気球日本ランキングのことで、その年のいくつかの大会の結果から出される日本人パイロットのランキング